病気や障がいがあっても、できるだけ自宅で自分らしく過ごしたい——。
そんな想いを支えるのが、医療と生活の両面から支援を行う訪問看護です。訪問看護では、看護師やリハビリ専門職が利用者のもとへ訪問し、病状の観察や医療的ケア、日常生活の援助、ご家族へのサポートを行います。
本記事では、その具体的なサービス内容をわかりやすく紹介します。ぜひ、ご覧ください。
訪問看護の対象者
訪問看護のサービス内容を理解するうえで、まず知っておきたいのが「どんな人が利用できるのか」という点です。
訪問看護は、病気や障がいのある方だけでなく、退院直後や慢性疾患の管理が必要な方など、さまざまな背景を持つ人が対象となります。
ここでは訪問看護を利用できる対象者について深堀していきましょう。
医師が必要と認めたすべての世代が対象
訪問看護の対象となるのは、病気や障がいによって通院が難しい方や、退院後も自宅で医療的ケアを必要とする方です。対象年齢は乳児から高齢者まで幅広く、医師が「訪問看護が必要」と判断した方であれば、年齢や疾患にかかわらず利用できます。
具体的には、次のようなケースが多く見られます。
・退院後も継続して医療的処置が必要な方
・慢性的な疾患(糖尿病、心疾患、呼吸器疾患など)を抱える方
・がん末期などで自宅療養を希望する方
・認知症や精神疾患をお持ちの方
・医療的ケア児や障がいを持つ小児の方
訪問看護は、身体の状態に合わせて「医療保険」または「介護保険」のいずれかを利用して受けることができます。40〜64歳の方で特定疾病(がん、ALS、パーキンソン病など)に該当する場合は、介護保険の対象となるケースもあります。
疾患や状態に応じた支援内容の違い
訪問看護は、疾患や状態に応じて支援内容が大きく異なります。たとえば、心不全や慢性閉塞性肺疾患などを抱える方には、病状悪化を防ぐためのバイタルチェックや服薬管理を中心に支援を行います。一方、終末期の方に対しては、痛みを和らげる緩和ケアや、ご家族への心理的サポートが重要になります。
また、小児分野では、人工呼吸器や胃ろうを使用しているお子さまへの医療的支援に加え、発達を支えるリハビリテーションなども行います。このように、訪問看護は「病気を治す看護」だけでなく、「生活を整える看護」として、幅広い層を支えています。
訪問看護で受けられる主なサービス
訪問看護では、利用者が安心して在宅療養を続けられるよう、多岐にわたる支援が行われています。医療的な処置にとどまらず、生活支援やリハビリ、家族へのサポートまで含めた「トータルケア」が特徴です。
ここでは、実際にどのようなサービスを受けることができるのか、医療・生活・リハビリの3つの視点から具体的に紹介します。
医療的ケアと病状の観察
訪問看護の中心となるのは、医師の指示書に基づいた医療的ケアです。バイタルサイン(血圧・体温・脈拍・呼吸)の測定や病状の観察を通して、体調の変化を早期に発見します。
また、次のような医療処置を行うことも可能です。
・点滴、注射、カテーテルの管理
・床ずれ(褥瘡)の予防と処置
・在宅酸素療法や人工呼吸器の管理
・たん吸引、胃ろうや経管栄養の管理
・インスリン注射や血糖測定
病院での処置と同等の安全性を保ちながら、自宅という安心できる環境で医療を継続できる点が大きな特徴です。医師への報告体制も整っており、異常が見られた際は迅速に連携を取ります。
日常生活の支援とご家族へのサポート
医療行為だけでなく、利用者の生活の質を維持するための支援も訪問看護の重要な役割です。
主な支援内容は次のとおりです。
・清潔保持のための入浴介助や清拭
・食事介助、嚥下評価、栄養指導
・排泄介助、ストーマ(人工肛門)ケア
・服薬管理、環境整備のアドバイス
さらに、ご家族へのサポートも欠かせません。介護方法の指導、医療機器の扱い方、緊急時の対応方法などを丁寧に説明し、介護負担の軽減を図ります。利用者とご家族の双方が安心して生活を続けられるよう支援するのが訪問看護の大きな目的です。
リハビリテーション・ターミナルケアなど専門的支援
訪問看護では、看護師だけでなく、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、言語聴覚士(ST)がチームで関わることがあります。これにより、寝たきり予防や関節可動域訓練、嚥下訓練、歩行訓練など、身体機能を維持・改善するためのリハビリテーションが自宅で受けられます。
また、がんの終末期や老衰などで「自宅で最期を迎えたい」と希望される方には、ターミナルケア(終末期ケア)を行います。痛みの緩和や呼吸管理、精神的支援を通じて、本人と家族の尊厳を大切にした在宅看取りを支えます。
訪問看護でできないこと
訪問看護では多くの支援を受けることができますが、すべての医療行為をおこなえるわけではありません。看護師が実施できる範囲は「医師の指示のもとで行う看護行為」に限定されています。
ここでは、訪問看護の範囲外となる行為や注意点について整理し、正しい理解を深めていきましょう。
診断や薬の処方など医師の業務にあたる行為
訪問看護では、医療的な処置を行うことができますが、すべての医療行為ができるわけではありません。医師の指示書がないままの処置や新たな診断、薬の処方、検査の判断などは、看護師の権限を超えるため実施できません。
このような行為は医師の領域にあたるため、訪問看護師は観察や報告を通して医師と連携し、必要な対応を提案します。あくまで「医師の指示に基づいて行うケア」が訪問看護の基本です。
24時間常駐や長時間の介護代行は対象外
訪問看護は、利用者の自立した生活を支援することを目的としており、介護代行や常駐サービスではありません。たとえば、日中ずっと付き添う介護、夜間の常駐ケア、または掃除や買い物などの家事代行は訪問看護の範囲外です。
ただし、医師の指示や利用者の病状によっては、夜間や緊急時に対応できる体制を整えている事業所もあります。利用時には、ステーションの体制や契約内容を確認しておくことが大切です。
まとめ
訪問看護のサービス内容は、医療的ケアから日常生活支援、リハビリ、終末期ケアまで多岐にわたります。年齢や疾患を問わず、医師が必要と認めたすべての人が対象です。訪問看護師やリハビリ職がチームで関わることで、在宅でも病院と同等の安心と専門性を届けることができます。
これから訪問看護を検討している方は、主治医やケアマネジャー、地域包括支援センターへ相談し、自分に合った支援体制を整えていくことが第一歩となります。
ぜひ、今回の知識をもとに、利用者さまへご説明してみてください。
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