精神科訪問看護は、統合失調症やうつ病などの精神疾患を抱える方が、自宅で安心して療養できるよう支援する医療サービスです。しかし「どのくらい費用がかかるのか」「自立支援医療を使うと安くなるのか」など、料金体系はわかりにくいものです。
この記事では、精神科訪問看護の基本料金や医療保険の仕組み、自立支援医療による負担軽減方法をわかりやすく解説します。
精神科訪問看護とは
精神科訪問看護とは、精神的な不調や疾患を抱える方が、住み慣れた自宅で安心して療養生活を続けられるよう支援する医療サービスです。病院での治療と異なり、自宅で過ごしながら心身の状態を整えることを目的としています。
対象となるのは、統合失調症、うつ病、双極性障害、不安障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、認知症、依存症など、継続的な支援を必要とする方です。主治医が「訪問看護が必要」と判断した場合に、訪問看護指示書が発行され、サービスが開始されます。
訪問を行うのは、精神科領域に特化した看護師や作業療法士です。体調管理、服薬支援、生活リズムの調整などを中心に、利用者と家族を一体的に支援します。とくに、症状の再発予防や入院の回避、社会復帰支援などに効果があるとされています。
精神科訪問看護の魅力は、「通院が難しい方でも在宅で治療を継続できること」です。外出や人との接触が不安な時期でも、自宅で安心してケアを受けられる点が、多くの利用者から支持されています。
医療保険で訪問看護を利用できる条件とは
精神科訪問看護の料金は、医療保険の「精神科訪問看護基本療養費」と「精神科訪問看護管理療養費」に基づき算定されます。訪問時間、週の訪問回数、利用者の居住形態(単独か同一建物内か)によって細かく設定されています。
精神科訪問看護基本療養費
精神科訪問看護では、訪問時間と頻度に応じてⅠ〜Ⅳの区分があり、最も利用されるのはⅠ〜Ⅱです。
下表は保健師・看護師・作業療法士が訪問した場合の基本料金を示しています(10割換算)
| 区分 | 条件 | 時間 | 10割 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Ⅰ | 週3日まで | 30分未満 | 4,250円 | 約425円 | 約850円 | 約1,275円 |
| Ⅰ | 週3日まで | 30分以上 | 5,550円 | 約550円 | 約1,100円 | 約1,650円 |
| Ⅱ | 週4日以降 | 30分未満 | 5,100円 | 約510円 | 約1,020円 | 約1,530円 |
| Ⅱ | 週4日以降 | 30分以上 | 6,550円 | 約655円 | 約1,310円 | 約1,965円 |
| Ⅲ | 同一建物内 3人以上 | 30分未満 | 2,130円 | 約213円 | 約426円 | 約639円 |
| Ⅲ | 同一建物内 3人以上 | 30分以上 | 2,780円 | 約278円 | 約556円 | 約834円 |
| Ⅳ | 特別訪問等 | – | 8,500円 | 約767円 | 約1,534円 | 約2,101円 |
このように、訪問時間と頻度が上がるほど、10割単価も上昇します。また、同一建物内で複数の利用者がいる場合は減額(区分Ⅲ)が適用されます。
精神科訪問看護管理療養費
訪問を継続的・計画的に実施するため、各利用者ごとに「管理療養費」が月ごとに算定されます。訪問回数に関わらず、初回と2回目以降で料金が異なります。
| 区分 | 条件 | 10割 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|---|---|
| 月の初日 | 初回訪問時 | 7,670円 | 約767円 | 約1,534円 | 約2,101円 |
| 2日目以降 | 以降の月内訪問 | 2,500円 | 約250円 | 約500円 | 約750円 |
この管理療養費には、訪問看護計画書や報告書の作成、主治医への連携報告などが含まれています。つまり、実際の「訪問1回あたりの料金」は、基本療養費+管理療養費の合算で計算されます。
月額の概算目安
訪問回数と自己負担割合ごとの月額目安は以下の通りです(基本料金のみ・加算除く)
| 頻度 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
|---|---|---|---|
| 週1回(月4回) | 約3,500円〜4,000円 | 約7,000円〜8,000円 | 約10,500円〜12,000円 |
| 週2回(月8回) | 約7,000円〜8,000円 | 約14,000円〜16,000円 | 約21,000円〜24,000円 |
| 週3回(月12回) | 約10,000円〜12,000円 | 約20,000円〜24,000円 | 約30,000円〜36,000円 |
訪問頻度が増えると比例して料金も上がりますが、自立支援医療制度を併用すれば月上限額が適用され、実際の支払いはこれよりも少なくなります。
自立支援医療での負担軽減
精神科訪問看護では、自立支援医療制度(精神通院医療)を併用することで、経済的な負担を大幅に軽減できます。この制度を利用すれば、医療費の自己負担割合が原則1割に下がり、さらに月ごとに上限額が設定されます。
申請要件・必要書類と手続きの流れ
自立支援医療の対象となるのは、うつ病、統合失調症、発達障害、不安障害、PTSD、双極性障害など、継続的な治療を要する方です。申請はお住まいの市区町村の障害福祉課で行います。
必要書類は以下の通りです。
- 主治医が作成した「自立支援医療(精神通院)診断書」
- 健康保険証の写し
- 所得証明書または課税証明書
- 印鑑(署名で代用可)
通常、申請から1〜2か月で「自立支援医療受給者証」が届きます。有効期限は1年間で、更新も可能です。
所得区分別の上限額と具体例
所得に応じて、1か月あたりの自己負担上限額が決まります。
| 所得区分 | 上限額(月額) |
|---|---|
| 生活保護世帯 | 0円 |
| 低所得1(非課税・年収80万円以下) | 2,500円 |
| 低所得2(非課税・年収80万円以上) | 5,000円 |
| 中間所得(年収約400万円未満) | 10,000円 |
| 一定所得以上 | 20,000円 |
たとえば月8回訪問しても、上限5,000円の方はそれ以上の支払いは発生しません。長期的に利用する方ほど、制度のメリットは大きくなります。
加算・実費と注意点
精神科訪問看護では、基本料金に加えて「加算」と呼ばれる項目が設定されています。これは、通常よりも専門性や時間を要する場合に算定される費用です。
主な加算の種類
代表的な加算には以下があります。
- 精神科緊急訪問看護加算(2,650円/回)
- 精神科長時間訪問看護加算(5,200円/週)
- 複数名訪問看護加算(1回4,500円〜)
- 夜間・早朝訪問看護加算(2,100円/回)
- 深夜訪問看護加算(4,200円/回)
- 24時間対応体制加算(6,400円/月)
これらの加算があっても、医療保険が適用されれば自己負担は1〜3割のままです。
実費・保険外サービスの確認
交通費や駐車料金などが別途発生する場合があります。とくに実施地域外への訪問や時間外対応などは、追加費用がかかるケースもあるため、契約時に必ず確認しておきましょう。
また、エンゼルケア(死後の処置)や長距離付き添いなど、保険適用外のケアは自費扱いとなり、1回あたり1万円前後が目安です。
まとめ
精神科訪問看護は、医療保険の適用により経済的負担を抑えながら、在宅で安心して療養生活を続けられる制度です。自立支援医療を併用すれば、月々の自己負担がさらに軽減され、継続利用がしやすくなります。
訪問回数や加算、生活環境に応じて費用は変動しますが、制度を正しく理解し、行政や事業所と連携することで、負担を最小限に抑えながら最適な支援を受けられます。
精神科訪問看護は「心の病と共に生きる」方にとって、再発を防ぎ、社会とのつながりを取り戻すための重要な在宅医療の一つです。安心できる環境の中で、自分らしい生活を取り戻す第一歩として、ぜひ活用を検討してみてください。
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