訪問看護における加算は、利用者の安心と事業所の経営を支える重要な仕組みです。その中でも「緊急時訪問看護加算」は、急な体調変化に対応できる体制を評価するものとして注目されています。
本記事では、サクラボ訪問看護の失敗事例をもとに、加算の内容や要件、Ⅰ・Ⅱの区分け、算定時のチェックポイントを解説します。ぜひ、ご覧ください。
サクラボ訪問看護の失敗談
訪問看護における加算の取り扱いは、現場の運営に直結する重要な業務です。しかし、制度変更や区分切替の際に対応が遅れると、思わぬトラブルが発生します。
ここでは、サクラボ訪問看護ステーションが実際に経験した「緊急時訪問看護加算」の切り替えに関する失敗事例を紹介します。
区分変更の把握不足による返戻の嵐
サクラボ訪問看護ステーションでは、緊急時訪問看護加算を「Ⅱ-1」から「Ⅰ-1」に切り替える際に大きな混乱が起こりました。切り替えの時期を正確に把握できなかったため、介護保険のレセプト請求が返戻となり、結果として多数の処理が滞ってしまったのです。
返戻の処理は多大な労力を要し、現場の信頼や事務処理効率にも影響しました。
その時の対処法
返戻が相次いだことで現場は混乱しましたが、適切な対応を取ることで被害を最小限に抑えることができました。トラブル発生後にどのように動いたのか、具体的な対処法を整理します。
ここからは「迅速な確認」「誠実な説明」「再請求での対応」という三つのポイントに分けて見ていきます。
国保連への早急な確認
まず最初に行ったのは国保連への直接確認でした。返戻理由を正しく把握することで、再請求に必要な情報を整理できました。制度上の正確な解釈を外部機関から得ることは、早期収束に欠かせません。
ケアマネジャーへの誠実な説明
居宅介護支援事業所の介護給費に緊急時訪問看護加算が直接影響しなかったため、ケアマネジャー側に返戻はありませんでした。しかし、それでも状況を丁寧に説明し、今後の対応を共有することで関係性を保ちました。
信頼を損なわない姿勢が後々の協力体制につながります。
月遅れ請求による収益確保
返戻分については月遅れ請求で対応しました。即時の収益化は難しくなりましたが、正しい形で再請求することで最終的に収益は回収できました。こうした「遅れても確実に取り戻す」姿勢が経営安定に直結します。
緊急時訪問看護加算とは
ここでは、そもそも緊急時訪問看護加算とは何かを紐ほどいていきます。利用者が安心して在宅療養を続けられるように設けられた制度ですが、算定条件や単位数には細かなルールが存在するのです。
ここでは制度の背景や目的、具体的な単位数や頻度、そして算定に必要な体制を解説します。
制度の背景と目的
緊急時訪問看護加算は、利用者が安心して在宅生活を送れるように整備された制度です。背景には「24時間対応できる訪問看護体制」へのニーズの高まりがあります。
急変時にも看護師が駆けつける体制を持つ事業所を評価するために創設されました。
算定単位と頻度
介護保険における加算は、原則として月1回算定可能です。指定訪問看護ステーションであれば加算(Ⅰ)が600単位、加算(Ⅱ)が574単位に設定されています。
初回訪問日の単位数に加えて算定できるため、請求時の管理が非常に重要です(参考:厚生労働省告示)。
算定に必要な体制
介護予防サービスにおいても緊急時訪問看護加算は算定可能です。内容は通常の訪問看護と同様で、利用者や家族の安心を確保するための加算として位置づけられています。在宅生活を長期的に支える観点からも重要な役割を持ちます。
緊急時訪問看護加算のチェックポイント
加算を正しく算定するには、制度の細かな要件を理解しておく必要があります。とくに2024年度改定後は「(Ⅱ)と(Ⅰ)の区分け」が導入され、体制整備の有無によって評価が分かれる仕組みとなりました。
ここからは両者の比較や実務上の注意点を詳しく見ていきます。
基本算定要件
加算を算定するには以下の要件を満たす必要があります。
- 利用者や家族からの電話相談に24時間対応できること
- 計画外の緊急訪問を必要に応じて行えること
- 利用者へ加算算定について説明し、書面で同意を得ていること
- これらは加算(Ⅰ)(Ⅱ)共通の基本要件であり、事業所は必ず満たしておく必要があります。
緊急時訪問看護加算(Ⅱ)の位置づけ
加算(Ⅱ)は、緊急訪問対応体制を備えている事業所を評価するものになります。指定訪問看護ステーションでは月1回574単位が算定可能です。
特徴は「基本的な24時間対応体制が整っていれば算定できる」という点です。特別な勤務間隔の確保などは要件に含まれず、標準的な緊急対応力を評価する仕組みといえます。これにより、多くの訪問看護ステーションが導入可能な区分となっています。
緊急時訪問看護加算(Ⅰ)の特徴
加算(Ⅰ)は、加算(Ⅱ)の要件に加えて「看護師の負担軽減に資する十分な業務管理体制」が求められます。指定訪問看護ステーションでは月1回600単位が算定可能です。
具体的には以下のような取り組みが必要です。
- 夜間対応を行った翌日の勤務間隔の確保
- 夜間勤務の連続回数を2回以内に制限
- 夜間対応後の休日確保
- ICT・AIの導入による業務負担軽減
- 複数看護師による支援体制の整備
これらは「持続可能な24時間対応」を実現するための条件になります。単に緊急訪問できる体制に加え、働く看護師の労働環境にも配慮している点が大きな違いです。
実務上の留意点
区分を選択する際には、単位数だけで判断するのではなく、実際に体制が整っているかどうかが重要です。例えば「夜間対応翌日の勤務間隔確保」が不十分な場合は加算(Ⅰ)の算定要件を満たしません。
無理に(Ⅰ)を選んでも返戻リスクが高まるため、実態に即した区分選択が望まれます。また、同意書や訪問記録の不備も返戻の原因となるため、帳票類の整備は必須です。
まとめ
緊急時訪問看護加算は、利用者の安心を支える大切な制度です。サクラボ訪問看護の失敗例が示すように、加算の取り扱いを誤ると返戻や信頼低下につながります。しかし、迅速な確認と誠実な説明で挽回することは可能です。
制度を「利用者の安心を支える仕組み」として位置づけ、正しい運用を徹底することが地域から選ばれる事業所への第一歩です。
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