訪問看護の現場では、医療やケアの質と同じくらい重要なのが「集金業務」です。毎月発生する自己負担金をどのように回収するかは、事業運営の安定に直結します。
サクラボ訪問看護ステーションでも、運営当初から口座振替を原則とした体制を整えていますが、実際には利用者の希望により一部で現金集金も併用しています。
本記事では、サクラボでの実際の対応や課題、そして他ステーションの声を交えながら、集金方法の現実を整理していきます。ぜひ、ご覧ください。
サクラボ訪問看護の実体験
サクラボ訪問看護ステーションでは、基本的に口座振替を採用しています。初回契約時に振替依頼書を配布し、できる限り自動引き落としでの対応を推奨しています。
しかし、なかには「現金で支払いたい」「通帳を家族が管理しており引き落としが難しい」といった理由から、一部の利用者では現金集金も行っています。
現金回収のスタッフへの負担
現金対応を行う上で、スタッフが感じるのは「お金を持ち歩くストレス」です。訪問業務の合間に集金を行うため、日によっては数万円単位の現金を持ち歩くこともあり、紛失や盗難のリスクが常に付きまといます。
また、訪問後に事務所へ戻ってからの金額確認・集計・入金など、事務作業の負担も増加します。「看護業務の延長でお金を扱うことに抵抗を感じる」「お釣りの準備が地味に手間」といった声もスタッフから聞かれています。
口座振替の落とし穴
一方で、口座振替にも別の課題があります。利用者がご逝去された場合、口座引き落としのタイミングが間に合わず、請求が滞るケースが発生することがありました。
「振替処理が間に合わず未回収になった」「ご家族への返金処理が煩雑になる」など、制度上の壁も存在します。とくに介護・医療の請求サイクルは複雑で、請求月と実際の入金月がズレることが多く、こうしたタイミングの差が小さなトラブルにつながることも考えられます。
このように、現金にも口座振替にもそれぞれ一長一短があるのが現場の実感です。サクラボでは、スタッフの負担軽減とリスク回避を目的に、できる限り口座振替を推奨しつつも、利用者に寄り添った柔軟な運用を心がけています。
現金派のステーション
他ステーションの現状を見ると、「現金派」は依然として多く存在します。
理由はシンプルで、「高齢者が多く、通帳やカード操作が不安」「引き落とし手続きが面倒」「手数料をかけたくない」といった声が挙げられます。あるステーションでは「指定銀行がないため、集金希望の方は手渡し」「1,000円分の小銭を持って回る」といった対応を取っているステーションもあるようです。
その一方で、「会議で所長が不在のときは現金を預かる」「できるだけ早く金庫に戻したい」といった心理的プレッシャーも報告されています。
現金集金のメリット
現金での集金は、即時性があり利用者と直接向き合える点が魅力です。とくに高齢者が多い地域では、顔を合わせて支払いができる安心感もあります。
- その場で受け取れるため、確実に回収できる
- 手数料がかからず、コストを抑えられる
- 利用者との直接的なやり取りで信頼関係が深まる
「今月もありがとう」という感謝のやり取りが生まれるなど、温かいコミュニケーションが生まれる点は現金集金の良さといえます。現金集金を通じて「毎月の支払いが会話のきっかけになる」「サービスを実感してもらえる」という声もあり、人とのつながりを大切にする現場に向いているでしょう。
現金集金の課題
一方で、現金集金にはリスクと手間がつきものです。集金袋や小銭の準備、金庫での保管など、業務時間外の作業も発生してしまいます。
- 集金袋・小銭・領収書など、準備作業が多い
- 盗難・紛失・誤計算のリスクが常につきまとう
- 特に独居や認知症の方の場合、立会いが必要になる
- 小規模事業所ではスタッフが兼務で対応せざるを得ない
このように、現金でのやり取りは「人の温かさ」を生む反面、事業運営上のリスクを抱える点に注意が必要です。また現金を扱う責任感とプレッシャーが大きく、スタッフの心理的負担にもつながります。
口座振替派のステーション
現金派のステーションもまだまだある中で、口座振替を導入しているステーションでは、業務効率と安全性の向上を実感する声が多く聞かれます。
「郵便局の引き落としに統一している」「原則引き落としだが一部現金」といった柔軟な運用をしている事業所も増加中です。
口座振替のメリット
口座振替は、事務業務の簡略化だけでなく、経営の安定化にもつながります。支払いの確実性と記録の透明性が高い点が評価されています。
- 自動引き落としのため、未収や支払い忘れがほぼゼロ
- 集金・入金業務が不要になり、人件費と時間の削減が可能
- 記録がWeb上で残るため、経理・監査対応もスムーズ
- 利用者も「銀行に行く手間がない」「支払い忘れがない」と好評
この方法は、利用者・事業所の双方にとって「ミスが起きにくく、ストレスが少ない」点が大きな強みとなります。利用者からは「支払日を覚えなくていいのが助かる」「通帳に履歴が残るから安心」といった声も多く、満足度は高いです。
口座振替の課題
ただし、口座振替にもいくつか注意すべき点があります。導入初期には書類やシステム対応の手間がかかり、利用者ごとに丁寧な説明も必要です。
- 初期導入時の書類提出や審査など、手続きが煩雑
- 口座残高不足時の対応が必要
- 引き落としまで約1か月のタイムラグがある
- 振替手数料の負担が発生する
サクラボでも、利用者が亡くなった直後の振替タイミングのずれなど、細やかな課題がありました。ただ、それでも「現金を持ち歩かなくて良い安心感」や「事務業務の削減」というメリットは圧倒的に大きく、導入効果を実感しています。
まとめ
サクラボ訪問看護ステーションをはじめ、現場の多くでは「現金」と「口座振替」の両立という形で運用されています。どちらにもメリットとデメリットがあり、完全に一方に寄せるのは難しいのが現実です。
現金集金は地域に寄り添う柔軟な対応が可能であり、利用者との信頼関係を深める面もあります。しかし、リスクと手間の多さは避けられず、スタッフ負担の増大につながります。一方、口座振替は初期手続きこそ大変ですが、長期的には業務効率・安全性・透明性のすべてで優れています。
サクラボでは今後も、利用者にとってもスタッフにとっても負担が少ない方法を模索しながら「安全性・効率性・信頼性」を兼ね備えた集金体制を整えていく予定です。
集金業務の改善は、単なる事務効率化ではなく「看護師がよりケアに集中できる職場環境をつくること」へと直結しています。これからの訪問看護経営においては、現場と制度の両面から「安心してお金を扱える仕組みづくり」が求められているのです。
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