在宅医療の需要が高まるなか、訪問看護でのリハビリ導入が注目されています。医療依存度の高い利用者に対して、看護師とリハビリ職が協働することで、安全性を確保しつつ生活の質(QOL)を高める支援が可能になります。
本記事では、サクラボの実際の現場体験を交えながら、訪問看護ステーションにおけるリハビリ導入の意義と効果を解説します。ぜひ、ご覧ください。
サクラボ訪問看護の実体験
訪問看護にリハビリを導入してから1年。サクラボ訪問看護ステーションでは、利用者さまの生活の幅が確実に広がりました。
看護師による医療的な支援に加え、理学療法士や作業療法士が関わることで、日常生活の動作や身体機能の維持・改善がより実感できるようになったのです。
リハビリ導入から1年
サクラボ訪問看護ステーションでは、リハビリ導入前、看護師が中心となり医療的ケアや服薬管理、バイタルサインの観察などを行っていました。それでも、利用者さまには満足していただいており、十分な看護を提供できていました。
リハビリスタッフが関わるようになってからは、より生活動作の改善に対して幅をもたせることができるようになったのです。利用者さまが「自分で動ける」範囲を拡大できたことで、介護量の軽減や生活意欲の向上につながっています。
たとえば「入浴動作が難しくなってきた」「トイレへの移動に時間がかかる」といった相談に対し、継続的な運動訓練や環境調整の提案しています。こうすることで、看護とリハビリが一体化なり「安全性」と「自立支援」を両立できるようになったのです。
リハビリ導入の具体的な効果
訪問看護でリハビリを導入することにより、利用者本人・家族・医療チームそれぞれに明確な効果が生まれます。
とくに、日常生活動作の改善やADL向上は在宅生活の継続に直結します。
ここでは、実際に見られた身体機能や生活の変化、看護師支援との相乗効果を具体例とともに解説します。
利用者の身体機能と生活の質が向上
訪問看護でリハビリを導入する最大のメリットは、利用者の「できること」が増えることです。関節可動域の維持、筋力強化、姿勢・バランス訓練などを通じて、日常生活動作(ADL)の改善が見られます。
たとえば、以下のような動作改善が顕著です。
- 入浴介助の軽減:可動域や筋力改善により、浴槽の跨ぎ動作が自立できるようになる。
- 歩行動作の安定:歩行訓練やバランス訓練を通じて、安全に屋内外生活を送ることができる。
- 基本動作の改善:寝返りや座位保持能力の向上により、介助量の軽減につながる。
これらの変化は、利用者の生活の質(QOL)を高めるだけでなく、家族や介護者の心理的・身体的負担も軽減します。
看護師の支援との相乗効果
看護師による健康観察や服薬指導に、リハビリ職による運動指導・環境調整が加わることで、チームとしての支援力が大幅に高まりました。
たとえば、褥瘡(じょくそう)を抱える利用者では、看護師が創傷ケアを行い、同時にリハビリ職がポジショニング指導やマットレス選定を実施。両者の連携により、再発予防につながったケースもあります。
医療的ケアと身体的アプローチが同時に機能することで、「予防」と「改善」を並行できるのが訪問看護でのリハビリの強みです。
ステーション運営におけるメリット
リハビリ職を配置することは、単なるサービス拡充にとどまらず、ステーション経営の安定化にもつながります。
利用者層の拡大、紹介件数の増加、チーム力の向上など、事業面でもさまざまな波及効果が見られます。
ここでは、運営面のメリットを制度的な観点から整理します。
サービス提供範囲の拡大と信頼性の向上
リハビリ職を配置することで、訪問看護ステーションのサービス領域が広がります。
利用者にとっては「看護とリハビリの両方が一括で受けられる」利便性があり、医療機関やケアマネジャーからの紹介も増えました。とくに、退院直後の在宅支援やADL改善を目的とした依頼が増加傾向にあります。
また、医療依存度の高い利用者への対応が可能になることで、事業所全体の信頼性や専門性も高まります。
スタッフ間の専門連携が促進
リハビリ職が加わることで、看護師が「運動面から見た身体の変化」を学び、リハビリ職が「疾患管理の視点」を理解することで、双方のスキルアップにもつながっています。
結果として、チーム全体の臨床判断力が向上し、利用者により的確なサービスを提供できるように成長中です。今後も双方の専門性を理解し合うことで、チームとして利用者さまを支える体制をつくることができます。
導入時の注意点と成功のポイント
職種間の役割分担を明確にする
訪問看護でのリハビリは、看護業務の一環として位置づけられています。そのため、リハビリ職が訪問する際も、主治医の訪問看護指示書にリハビリ内容が記載されている必要があります。
看護師・リハビリ職のいずれも、業務範囲と責任を明確にし、法令に基づいた運用を行うことが重要です。
定期的な看護師訪問の実施
介護報酬改定(2018年)以降、リハビリ職の訪問のみで継続的にサービス提供することは認められていません。最低3か月に1回以上の看護師アセスメント訪問が必要とされており、状態観察とリハビリの継続可否を評価する仕組みが求められます。
この制度的背景を理解した上で、リハビリ導入を進めることが安定運営のポイントです。
スタッフ教育と情報共有体制
訪問現場では、リスク管理が非常に重要です。とくに、心疾患・呼吸器疾患・がん終末期など、状態変化が大きい利用者の場合は、セラピスト単独判断ではなく、常に看護師と情報共有を行う必要があります。
日報・カンファレンス・ICTツールを活用し、全スタッフが同一の情報を把握できる環境を整えることで、事故防止とケアの質向上につながります。
まとめ
リハビリを導入することは、利用者・家族・事業所のすべてにとって大きな価値をもたらします。利用者さまにとっては「動ける」「できる」を取り戻すことができ、家族は介助負担が軽減します。
事業所にとっては、専門性の高い包括的支援を提供できる体制を整えられる点で、競争力の向上にもつながります。ただし、制度上の算定要件や訪問指示書の記載、職種間の役割分担には十分な注意が必要です。
リハビリ導入の本質は、単なる機能訓練ではなく「利用者の生活を支えるチーム医療」を構築することにあります。看護とリハビリが互いの専門性を尊重し、協働することこそが、真の在宅ケアの充実につながると言えるでしょう。
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