在宅での療養を支える「訪問看護」には、介護保険と医療保険の2つの制度があります。しかし、「どちらが対象になるのか」「自己負担はいくらか」など、仕組みが分かりにくいと感じる方も多いでしょう。
この記事では、医療保険で訪問看護を利用できる条件や料金の目安、注意点を分かりやすく解説します。制度を正しく理解して、安心して在宅ケアを受けるための参考にしてください。
訪問看護の基本
まずは、訪問看護が介護保険の対象となるケースを理解しましょう。訪問看護には「医療保険」と「介護保険」の2種類があり、どちらを使うかは利用者の年齢や病状、認定区分によって異なります。
ここでは介護保険が優先される仕組みと、その基本的な考え方について解説します。
訪問看護における介護保険の基本的な考え方
訪問看護は、医療保険と介護保険の両方で利用できる制度です。
原則として、以下の条件に該当する場合は「介護保険」が優先されます。
- 65歳以上で要介護・要支援認定を受けている方
- 40歳〜64歳で特定疾病に該当し、要支援・要介護認定を受けている方
※詳しくは下記の記事をお読みください。

医療保険で訪問看護を利用できる条件とは
在宅療養を希望する方にとって、訪問看護は大切な支援手段の一つです。
ただし、利用できる保険制度には条件があり、介護保険が使える方と医療保険での対象者では仕組みが異なります。
ここでは、医療保険で訪問看護を利用できる人の条件や利用までの流れを詳しく見ていきます
医療保険が適用されるのはどんな人?
訪問看護は、介護保険と医療保険のどちらを利用するかで条件が大きく異なります。原則として、介護保険が優先となりますが、一定の条件に該当する方は医療保険の対象となります。
医療保険で訪問看護を利用できるのは、次のような方です。
- 40歳未満の方
→介護保険の対象外であるため、すべて医療保険での利用となります。 - 40歳以上65歳未満の方
→「16特定疾病」に該当しない方、または要支援・要介護の認定を受けていない方。 - 65歳以上の方
→要介護・要支援の認定を受けていない方。 - 要介護・要支援の認定を受けている方であっても、以下のいずれかに該当する場合。
1. 厚生労働大臣が定める19の疾病または1つの状態(がん末期や難病など)に該当する
2. 精神科訪問看護が必要である(認知症は除く)
3. 病状悪化などにより「特別訪問看護指示書」が発行されている
このように、介護保険の対象者であっても特定の疾病や状態に該当すれば、医療保険の利用が可能です。なお、介護保険と医療保険の併用は不可となっています。
訪問回数・時間の制限について
医療保険では、訪問回数や時間に一定の制限があります。
- 1日1回(30〜90分程度)まで
- 原則として週3回まで
- 1人の利用者に対して、1事業所のみが訪問可能
ただし、厚生労働大臣が定める疾病や特別訪問看護指示書が交付されている場合には、1日3回、週4回以上の訪問が認められています。精神科訪問看護の場合は、30分未満・30分以上の区分で報酬が異なります。
また、医療保険では介護保険と異なり利用限度額の上限が設けられていません。ただし、規定回数を超えると自己負担となるため注意が必要です。
利用開始までの手続き
医療保険で訪問看護を利用するには、次の流れを踏みます。介護保険との手続きと異なりますので、確認していきましょう。
- 本人または家族が主治医または訪問看護ステーションへ相談
- 主治医が訪問看護の必要性を判断
- 主治医が「訪問看護指示書」を交付
- 訪問看護ステーションが指示書を受け、サービス提供を開始
訪問看護は医師の指示のもとに提供される医療行為の一部であるため、指示書の交付が必須となります。
訪問看護を医療保険で利用した場合の料金
訪問看護の料金体系は複雑に見えますが、構造を理解すれば計算の流れは明確です。ここでは、医療保険を利用する際の基本料金、加算、月の概算料金の目安を順に紹介します。
基本料金の仕組み
訪問看護の料金は「訪問看護基本療養費」と「管理療養費」で構成されています。
以下は、正看護師が訪問する場合の10割負担時の目安です。
| 区分 | 基本療養費 | 管理療養費 | 合計(10割) | 1割負担 |
|---|---|---|---|---|
| 月の初日 | 12,950円 | 5,550円 | 18,500円 | 約1,300円 |
| 週3回まで | 8,530円 | 5,550円 | 14,080円 | 約850円 |
| 週4回以降 | 9,530円 | 6,550円 | 16,080円 | 約950円 |
※准看護師が訪問する場合は、基本療養費が約500円低く設定されています。
加算料金の例
訪問看護では、利用者の状態や体制に応じて加算が発生します。
代表的な加算と1割負担時の料金は次のとおりです。
| 加算項目 | 10割負担 | 1割負担 |
|---|---|---|
| 24時間対応体制加算 | 6,400円 | 640円 |
| 特別管理加算(Ⅰ) | 5,000円 | 500円 |
| 特別管理加算(Ⅱ) | 2,500円 | 250円 |
| 緊急訪問看護加算 | 2,650円 | 270円 |
| 夜間訪問加算 | 2,100円 | 210円 |
| 深夜訪問加算 | 4,200円 | 420円 |
| 退院時共同指導加算 | 8,000円 | 800円 |
これらの加算は、月単位または実施ごとに発生します。たとえば「特別管理加算(Ⅱ)」は月1回、「緊急訪問加算」は実施時ごとに算定されます。
訪問看護で医療保険を利用する際の注意点
医療保険で訪問看護を利用する際には、料金以外にも確認しておきたいポイントがあります。ここでは、介護保険との違いや加算の注意点、自己負担割合などを整理して解説します。
介護保険との併用はできない
訪問看護では、介護保険と医療保険を同時に使うことはできません。介護保険が優先されるため、介護認定を受けている方は原則として介護保険での利用となります。
ただし、がん末期など厚生労働大臣が定める疾患に該当する場合や主治医が必要と判断した場合には、医療保険を適用できます。
要介護度による支給限度額と自己負担への影響
自己負担割合は年齢と所得によって異なります。
| 年齢区分 | 自己負担割合 |
|---|---|
| 義務教育就学前 | 2割 |
| 義務教育就学後~70歳未満 | 3割 |
| 70歳以上~75歳未満 | 2割(一定所得以上は3割) |
| 後期高齢者(75歳以上) | 1割(一定所得以上は3割) |
また、訪問看護の交通費は公的保険の対象外であり、実費が発生します。遠方訪問や特別地域への訪問では、別途交通費を請求される場合もあるため、利用前に必ず確認しましょう。
加算の取り扱いと注意点
加算は利用者の病状や対応時間帯に応じて加わるため、同じ訪問回数でも費用が変動します。特に次のケースでは費用が上がりやすいため、あらかじめ把握しておくことが重要です。
- 深夜・早朝の訪問を希望する場合
- 緊急訪問が必要な場合
- 医療機器の管理を伴う場合(在宅酸素・胃ろう・人工呼吸器など)
- 終末期(ターミナルケア)対応が必要な場合
こうしたケースでは、事前に看護師や主治医、ステーション管理者と費用見積りを共有することをおすすめします。
自費利用の選択肢もある
公的保険を使わずに、自費で訪問看護を利用することも可能です。自費サービスであれば、介護保険・医療保険の条件を問わず利用できますが、費用は全額自己負担となります。
病気や年齢に制限がないため、産後ケア・メンタルケア・看取り前のサポートなど、自由な利用が可能です。
まとめ
医療保険で訪問看護を利用できるのは、介護保険の対象外の方や特定疾病・特別指示書が交付された方など、一定の条件を満たす場合に限られます。訪問回数や時間に制限はありますが、利用限度額が設定されていない点は大きなメリットです。
訪問看護は医師の指示のもとで行われる医療行為であり、主治医の指示書がなければ利用できません。また、加算の内容や自己負担割合、交通費などを確認し、安心して利用できる体制を整えましょう。
訪問看護の仕組みを理解しておくことで、急な病状変化にも柔軟に対応できます。介護保険との違いを正しく理解し、自分や家族の状況に合わせて最適な方法を選択することが、安心した在宅療養の第一歩となります。
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